Campania
Bajola
バイヨラ
ナポリ湾西部に浮かぶフレグレエ群島最大の島であるイスキア島で生まれ育ったフランチェスコ イアコノ。アルト アディジェの醸造学校で講師を務めたという異色の経歴を持つ。イスキア島の中心産業がブドウ栽培から観光に変わり、残ったのは大規模ワイナリーばかり。「今イスキアのワインは農薬と化学肥料に頼った栽培と、完全にコントロールされた醸造、大量生産を目的としたワインしか残っていない。」と言い切ります。「この完全に淘汰されてしまったイスキアのワイン造りを復活させたい、そしてイスキアに残る数少ない生産者にもう一度気付いてほしい」知識や技術ではない、自然と対峙する意志と状況を受け入れる柔軟性。イスキアという特殊な土地環境を生かした無理のない柔軟な価値観と醸造哲学。イスキアのイメージを今後覆していくであろう、楽しみある造り手です。
ナポリ湾西部に浮かぶフレグレエ群島最大の島であるイスキア島。近年は温泉地、リゾ
ート地として有名ですが、元来は島の産業はすべてブドウ栽培で成り立っていた。 ビアンコ
レッラやフォラステ ッ ラといった地ブドウが有名ではあるが、起源を辿ると 紀元前 700年 に
ギリシャ人が上陸し、イタリア、スペイン、フランスとワイン用のブドウが伝播した起源と言わ
れている。
当主であるフランチェスコ
イアーコノは、イスキア島で生まれ幼少期を過ごした。父の仕
事の関係でミラノへと移り住み、奇しくもワイン造りの道へ進み、エノロゴ(醸造 家) としてフ
ランチャコルタやアルトアディジェのワイナリーで働いていた。
40歳を過ぎ、父の死もあり親戚の残るイスキア島へ戻ったフランチェスコ。幼少期に見て
きたイスキアのブドウ栽培、ワイン造りの風景は大きく姿を変え、畑は放棄され町は多くの観
光客で溢れていた。「昔のイスキアは 生計を立てるにはブドウ栽培しかなかった。みんな貧
しかったのさ、、。靴もなく 裸足 で過ごしていたのをよく覚えてる よ。険しい斜面を登り、畑仕
事をしてなんとか生計を立てていくよりも、街に立ち並ぶブティックや温泉リゾートで働いた
方がよほど効率よく稼ぐことができる。」
畑では一切の農薬や化学肥料を使わずに、ビオディナミによる農法を行う。銅と硫黄物についても限りな
く少ない量に留め、
自然由来のエッセンスなどを代用する方法にチャレンジしている。現時点で硫黄は使用せず、銅は 1haあたり 600gまでに
とどめている。 畑に残る農薬の影響が無くなるまでに 10年の歳月を費やしたと話すフランチェスコ。 2010年より実験的な
醸造を続け、初めてのボトリングは 2013より開始 。
バイヨラ の 土地 には 、 小さな作業小屋はあったものの、醸造を行 え る うカンティーナ と 呼 ぶ に は 小 さ す ぎ た 、、。 「 この土地の
景観を変えてまでワインを造るのは ナンセンス 、何よりも今ある環境を最大限に活用するべき 、、。 」 、そう考えたフランチェス
コ。「 Vino in Vigna」直訳すると畑のワイン、畑の中心にあった貯水槽(非常に古いもので、農業用水を貯めるために作ら
れた)を 、醗酵・熟成を行うタンクに改造。どの造り手にとっても言える事だが、収穫したブドウは傷が付いたところから空気に
触れ酸化が始まる。その酸化を最小限にとどめるためには早くカンティー ナに運ぶか、酸化防止のために SO2を使用する
必要がある。 フランチェスコ曰く、「極限まで完熟したブドウは房から落ちる寸前の状態、これを収穫して僅か数十秒でタンク
に入れることができる。地下に埋まったセメントタンクは、温度も非常に安定しているし、空気との接触する時間もほとんどない
ため、酸化の心配をする必要がない。」結果的に収穫から、ボトリングまですべて畑の中心にあるタンクの中で行う 。 結果
SO2を必要としないワイン造りへと至る。
完熟したブドウは果皮と共にタンクの中で緩やかに醗酵。圧搾するまで約
1~2か月、醗酵が 終わり果帽が沈み込んだタイミ
ングで圧搾を行う。そのまま屋外のタンクで 12か月、翌年の収穫があるのでそれ以上の熟成ができないという現状もありボ
トリング。瓶内で 6か月の熟成。当然ながらフィルターや清澄は行わず、瓶内に残ったオリによってワインが酸化から守られ
る。
「醸造学校で教えてきた身でありながら、実際に造るワインはそのタブーをことごとく踏襲したものばかり、、。矛盾していると思
われるかもしれないけれど、学校で教えることがワイン造りの本質ではないんだ。モダンで画一化されたワイン、【毎年変わら
ない味わいのワインを造るための技術】であって、大量生産のための手段なのさ。自然というものと対峙して、ワインを造るた
めには、年による変化も、バクテリアや酸化の影響も受け入れていくのは当然の事。」
醸造についてはすさまじい知識と情報量を持つフランチェスコ、しかし彼自身が本当に造りたいワインに必要なのは、知識で
も技術でもない。自然と対峙する意志と、状況を受け入れる柔軟性。
2020年よりフランチェスコの娘アリーチェが、本格的にワイン造りに参加し始めたことで、これまでの課題だったブドウ畑の手入れが行き届き始めたバイヨラ。イスキアという特殊な土地環境を生かした柔軟な価値観と醸造哲学、イスキアのイメージを覆す、楽しみある造り手です。
Lineup
それぞれのブドウは完熟を待ってから収穫し、畑にある醗酵槽にて果皮と共に30~60日の醗酵、圧搾後10ヶ月の熟成。醸造からボトル詰めまで、SO2をはじめ一切の添加を行わない。猛烈な暑さと水不足の影響で、過熟なブドウとなった2017。醗酵温度も高く揮発酸も非常に高い、当時はピーキーで不安定さのあるワインでした。4年間ほど時間をかけたことで、高い揮発酸と果実のバランスがかなり取れたと感じます。トロピカルな果実味と染み出す旨味、軽快で心地よい酸、非常に喜べる味わいになりました。
それぞれのブドウは完熟を待ってから収穫し、畑にある醗酵槽にて果皮と共に醗酵、そのまま翌4月まで熟成。圧搾後、約1カ月タンクで静置し、オリ引きの後のボトル詰め。ほとんどの期間を果皮と共に過ごした驚きの白ワイン。醸造からボトル詰めまで、SO2をはじめ一切の添加を行わない。
ビアンコ フォッリアのタンクより、醗酵が終わったワインを抜き取り、テラコッタ製の樽に注ぎ足す。約10%これまでのヴィンテージのワインとオリを引き継ぎ、ウイヤージュ(補酒)せずに10カ月の熟成。途中フロールに守られたり、微弱な酸化熟成を経たビアンコ。形式は違えど、「ソレラシステム」に着想を得て、独自の手法でありながら、イスキアの火山性土壌や潮風、ミネラルをダイレクトに感じる味わい。醸造からボトル詰めまで、SO2をはじめ一切の添加を行わない。
父の友人が栽培している標高750mの畑、アヴェッリーノのアリアーニコを、イスキアに運び醸造。10月中旬の収穫。除梗し、開放桶にて果皮と共に1カ月の醗酵。途中ヴィオニエの梗を加える。圧搾後、テラコッタ製の樽に入れ6か月の熟成。ボトル詰め後、24カ月の熟成を行う。ビアンコ同様、SO2は一切使用していない事もあり、やや高めの揮発酸も感じます。しかし濃密な果実とブドウ由来の酸、タウラージにも使われるポテンシャルのアリアーニコとは、思えないほどの軽やかさと飲み心地の良さ、本当に驚かされます。