Trentino
Rosi Eugenio
ローズィ エウジェニオ

緻密に考えられたバランスと複雑さ、奥に見える土地の強い個性。トレンティーノという厳しい環境に向き合い続けた最高の造り手ロヴェレートから北へ5kmほど、piccolo dolomiti(小さなドロミテ渓谷)と呼ばれている渓谷の間に広がるマルツェミーノのブドウ畑。反面、少し山に入れば、石灰岩、砂、険しい斜面に包まれたブドウ畑が広がっている。それぞれの環境、栽培、品種、数えきれないほどの実践と検証を繰り返してきたエウジェニオ。カベルネやメルローの持つ本質、マルツェミーノが見せる素直さ、そしてノジオーラの新しい可能性。醸造においても同じ、彼の探究心の強さには絶句してしまう。マセレーション(果皮浸漬)の意義、野生酵母による醗酵とその効果、熟成による変化。すべての意味を追求する彼のたどり着いた答えは、とてもシンプルなものだということ。これからの変容と兆しを感じる造り手。

トレントの南、ロヴェレート近郊の町ヴォラーノ。
スプマンテの生産やマルツェミーノを代表として昔から盛んに栽培・醸造が行われてきた土地。とはいうものの、基本的にはスフーゾ(量り売り)の文化であり、多産に適したペルゴラ仕立てのブドウ棚の風景が良く似合う土地。父のブドウ作りが彼にとってのスタート、そして醸造家としての道を選ぶ。いかに的確に、効率よく、合理的に、、、そのような言葉ばかりの醸造から解放されるきっかけとなったものは、土地の適性、ブドウ樹の計り知れない可能性を自ら体験したこと。畑は大小10か所以上に点在し、マルツェミーノをはじめとし、カベルネやメルロー、ノズィオーラ、ピノ ビアンコ、シャルドネ等を栽培。しかしそれぞれの畑は細かく寸断され、合わせてもわずか 6ha にしか過ぎない。畑の土壌は、この地域全般に言える砂質、粘土質土壌、標高 750mにある Barassa の畑(シャルドネ)やノジオーラ、ピノ ビアンコの畑は、細かく砕かれた石灰岩が多く含まれており、非常にミネラルに富んでいる。

白ブドウでのマセレーション(果皮浸漬)を行った醗酵の与える効果、そして熟成に至るまでの様々な実験。醗酵という、ある意味「安定」した状態を維持することで、これまでにない果実の個性・味わいを表現。そして近年、樹齢を重ねたノズィオーラが、エウジェニオの想像をはるかに超える伸びしろを持っていたこと、結果ノズィオーラの成長とともにワイン自体がひとまわり大きくなり、2010、2011 と圧倒的な成長を見せてくれた。さらにそれぞれの品種が、驚くほど緻密に組み上げられたビアンコ、アニーゾス。ペルゴラという仕立ての良さを十分に引き出し、弱さをしっかりと補うべく改良した仕立ては、樹上での長期間の熟成を可能にした。収穫後セレーションを行いつつ野生酵母による醗酵を行い、果実と接触していることで非常に安定した状態で熟成。マルツェミーノの持つ果実的デリケートさと柔らかさを十二分に感じさせてくれるポイエーマ。

1か月に及ぶ白ブドウ(果皮のみ)のマセレーション。結果、非常に不安定であるはずのロザートの発酵過程を、白ブドウの果皮で守ること。結果、驚くほどの安定を手に入れた。それでいて、もの凄いバランス感のあるロザートが生まれることとなった。そして 3 つのヴィンテージを組みあわせるという荒業によって誕生したカベルネフラン。マセレーションだけではない、酵母による保護を最大限利用した奇抜すぎる手法。
圧搾後は極力酸素との接触を避けつつ、そこに翌年のヴィンテージを加える。(結果、樽の中で眠っていた酵母が活性化し、その分酸素から耐えられる期間が伸びるという事につながる)、これを 3 回繰り返した結果、SO2 の添加を極端に減らすことができる。強烈な土地環境(強い砂質、自根による植樹)で収穫したカベルネフラン、その繊細な香りを十分に尊重した結果、ヴィンテージをなくすという手段に踏み切るという大胆さ。エウジェニオの探究心と、尽きることのない実験。彼以外には決してできない唯一の、そして素晴らしい存在感を持ったワインを造りだす。
Lineup

区画、品種ごとに完熟を待ってから収穫。除梗し、すべてのブドウで果皮と共に醗酵を終える。圧搾後、醗酵が終わり切る前、段階的にアッサンブラージュを行い、木樽にて24ヵ月、ボトル詰め後24か月の熟成。2020年は大きな気温差がなく、比較的安定したヴィンテージ。すでに開いており素晴らしい状態。ヴォリュームと複雑さ、余韻の長さ、3品種の一体感を感じる味わい。

区画、品種ごとに完熟を待ってから収穫。除梗し、すべてのブドウで果皮と共に醗酵を終える。圧搾後、醗酵が終わり切る前、段階的にアッサンブラージュを行い、木樽にて24ヵ月、ボトル詰め後12カ月の熟成。「最良年」といえる2016、一部を自身のセラーにてさらに48か月の熟成。。最大のポテンシャルが、熟成によって磨かれ、最高の状態でバランスする。エウジェーニオ ローズィの集大成となる白。

ポイエーマやエゼジェズィの畑より収穫したブドウ。黒ブドウより醸造したロゼに、圧搾したアニーゾスのヴィナッチャを加えて1か月のマセレーション。突飛な手法でありながら、繊細さ、柔らかさを持った個性的なロザート。2022年は猛暑でありながら、バランス感のあるブドウを収穫。白ブドウの比率が増えたことで、今まで以上に軽やかさや繊細さを感じる味わい。

収穫後、セメントタンクの中で約1か月、果皮と共に醗酵を行う。他に全体の40%のブドウは約1カ月のアパッシメントを行った後、除梗せずにセメントタンクに加えて約1か月。圧搾後、750Lの木樽にて24か月、ボトル詰め後さらに36か月熟成。タンニンもアントシアニンも少ないマルツェミーノを、徹底した収量制限とアパッシメント(陰干し)。凝縮を感じつつもとても軽やかで、他のワインにはない透明感を持った赤。繊細さとバランス感、細くも非常に長い余韻を持つ、個性際立つマルツェミーノ。

樹上で限界まで遅らせてから収穫、果皮と共に約60日以上、野生酵母にて醗酵を促す。圧搾後、木樽(500L)にて24か月、ボトル詰め後36カ月の熟成。高密度な果実と華やかで奥深い香り。それでいて驚くほど軽快な飲み心地、カベルネ ソーヴィニヨンのイメージを覆す繊細さ、そして奥行きを表現したワイン。2019年は、バランスはあるものの昼夜の気温差を強く感じるヴィンテージ。静かで繊細、かつ複雑な香りからはブドウの成熟度合いの高さを直感的に感じます。

樹上で限界まで遅らせてから収穫、果皮と共に約50日、野生酵母にて醗酵を促す。圧搾後、木樽(500L)にて24か月、ボトル詰め後84カ月の熟成。エウジェーニオ本人が「完成」、と感じた時にリリースされる、特別なエゼジェズィ。ちょうど収穫より10年が経ってリリース。熟成香の深さと果実、酸の一体感が素晴らしい、非の打ちようがないカベルネ・メルロー。

IGT 2019,2020.2021年 赤 750ml

収穫後、3か月に及ぶアパッシメント(ブドウの影干し)を行う。その後、除梗せず約3か月果皮と共に醗酵を行う。圧搾後古バリックに移し24か月の熟成。レチョート デッラ ヴァルポリチェッラの手法に着想を得た、デリケートなマルツェミーノの個性を引き継いだ、個性的なヴィーノ ドルチェ。